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蜜愛~男になった女~
第7章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】
長儀子は泣きながら廊下を小走りに歩いた。何故、涙が次から次へと溢れ出るのか長儀子自身にさえ判らない。信頼にもたれかかり、甘えた声を上げる側室とその身体を抱く信頼と―、あの光景に、どうして心がこれほど乱れるのだろう?
まだ恋を知らぬ長儀子には、己れの内で荒れ狂い、身の中を駆けめぐる感情が妬みであると気づきようもないのだ。長儀子は訳の判らぬまま、ただ涙を流し続けた。その涙の理由を知りもせずに。