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蜜愛~男になった女~
第7章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】
 そんなことを考え、自嘲めいた笑いを刻む。
 考え事をしたり、ゆきづまった時、長儀子はよくこうして樹に登った。むろん、嫁す前、父からはよくよく〝樹登りだけはならぬ〟と言い聞かされてきたのだが。
 が、こうして高みに座り、空を見ていると、些細なことで思い悩んでいる自分がとてもちっぽけな生きものに思え、悩んでいること自体が無意味に感じてくるから不思議だ。長儀子は湖のように蒼くて深い二月の空を見上げ、無意識に両脚を前後に揺すった。
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