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蜜愛~男になった女~
第7章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】
「さようでございましたか」
琴路は小さく頷くと、どこか遠い眼で問うた。
「姫様は〝高嶺桜(たかねざくら)〟のお話をご存じでいらっしゃいますか?」
「高嶺桜?」
長儀子が涙の溜まった眼で訊き返すと、琴路は微笑んだ。懐から懐紙を取り出し、その涙の雫をそっと拭ってやると、長儀子の乱れた髪を愛情の込もった仕草で直した。我が乳を含ませて育ててきた姫は、たとえ主従の間柄とはいえ、我が子も同様である。