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蜜愛~男になった女~
第8章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】 弐
【弐】
それからひと月は何事もなく過ぎた。長儀子の日常は表面はこれまでと何ら変わることなく流れるように過ぎてゆく。
深い絶望や落胆もない代わりに、歓びやときめきもなく、要するに極めて単調な味気ないものであった。呼吸をするのさえ、ただ惰性的になされている行為のようであり、長儀子は、そんな我が身をまさに生かされている屍(しかばね)のようだと半ば自嘲気味に醒めた眼で見つめることがあった。