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蜜愛~男になった女~
第8章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】 弐
良人に見向きもされずに、日々孤独に暮らしている娘の身を案じておらぬはずはない。
「京に帰ることはできないであろうか」
ふと洩らした長儀子の願いに、琴路は眼を瞠った。
「ひとめでも良い、おもうはんにお逢いしたい」
涙が、溢れた。頼りにするべき良人とは心通わせることも叶わず、ひたすら無為に刻(とき)をやり過ごす日々。せめて京にいる病床の父にひとめ逢うことができたならと、長儀子は思った。