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蜜愛~男になった女~
第8章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】 弐
信頼は長儀子に近付くと、その手首を掴んで引き寄せた。むさぼるような口づけの間も、長儀子の眼は虚ろに開いたままで、瞬きもしない。
何もかもが空しかった。数日前の夜、約束どおり、長儀子は信頼の寝所に伺候したが、信頼はいつまで経っても長儀子を京に帰そうとはしなかった。長儀子がいくら訊ねても、〝その中(うち)な〟と適当に逃げてしまう。初めは必死になって問いつめていた長儀子も次第に何も言わなくなった。