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蜜愛~男になった女~
第9章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】 参
―ああ―。
何と凄絶な美しき眺めであろうと、長儀子は、しばし我を忘れて舞い散る薄花桜(うすはなざくら)を見つめた。狂ったように舞い流される花びらにそっと手のひらをかざすと、小さなひとひらの花びらが舞い降りる。と、見る間に白い花片が掌(たなごころ)の中で儚く消えた。
愕きに眼を瞠り、ふと頭上を振り仰げば、風にのって流れる白い花びらは、いつしか雪の花びらに変じていた。白い雪がくるくると風に踊る。