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第9章 番外編【櫻の系譜・壱～雪時雨（ゆきしぐれ）～】　参

　今日の信頼は常になく饒舌であり明るかった。そして、そんな信頼の変化がつとめてこの場を暗くすまいとの配慮であることを、長儀子も琴路も心得ていた。
「では、少し長儀子を借りるぞ」
　信頼が長儀子を逞しい腕で抱え上げた。琴路は平伏して、信頼の後ろ姿を見送った。
　琴路にもまた、長儀子の生命の焔が今にも燃え尽きようとしていることが漠然とではあるが察せられていた。