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蜜愛~男になった女~
第10章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 壱―お千世   
【其の壱―お千世】

 風が吹く度にふわりと花びらが舞い上がる。ほぼ純白と言っても良い花片が一斉に舞い流される様は、冬に見る雪を思わせた。
 お千世(ちせ)はそっと眼を閉じた。さわさわと揺れる梢や枝葉のそよぎがあたかも雪の降る音のように思えてくる。
 否、現実には雪の降る音なぞこの世に存在しないのだが、こうして降りしきる花びらを浴びて立っていると、いつしか自分が雪の中に佇んでいるような錯覚に囚われるのだ。
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