パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第10章 番外編【櫻の系譜・弐～水面の月－高嶺桜－】　壱―お千世　　　

「良いか、私は、そなたにひとめで魅せられてしまったのだ。ここでめぐり逢うたのも何かの縁であろう。どうか大人しくしてくれ」
　そう言いながらも、男の手は器用にお千世の着物の帯をするすると解いてゆく。熱い唇の感触が今度は首筋を這うのを感じて、お千世はいっそうきつく瞼を閉じる。
　頭上でまた、風の唸りを聞いたような気がした。固く閉じた眼裏で白い無数の花びらが狂ったように風に舞っていた。