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蜜愛~男になった女~
第10章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 壱―お千世

が、お千世はそれで良いと思っている。お千世にとって「桜の君」がどこの誰であるかなど、何の意味もない。二、三日に一度、ほんのひとときの間だけ彼(か)のひとと持てるわずかな逢瀬だけが真実なのだから。
―桜の君、あなたは一体、どこのどなたなの?
一度だけ、男に訊ねたことがあった。満開の桜の樹の下で男は狂おしいほどに烈しくお千世を求めた後、その腕にかき抱いていた。お千世は男の腕の中で月明かりに妖しく浮かび上がる夜の桜を見上げていた。
―桜の君、あなたは一体、どこのどなたなの?
一度だけ、男に訊ねたことがあった。満開の桜の樹の下で男は狂おしいほどに烈しくお千世を求めた後、その腕にかき抱いていた。お千世は男の腕の中で月明かりに妖しく浮かび上がる夜の桜を見上げていた。

