この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蜜愛~男になった女~
第10章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 壱―お千世

しばらく声も出なかった。藩主信純の女狂いはつとに有名だ。時の将軍家の養女を妻に迎えながら、あまたの側室を侍らせている。名の知れた側室だけでも十指に余るほど、恐らく気紛れに手を付けた女も含めれば、ゆうに二十人はいるだろう。
―では、私もその中の一人だと―?
あまりの衝撃に、涙すら湧いてこない。男が自ら名や身分を明かさぬことへの不審がないと言えば嘘にはなったが、男の正体を知ろうとするよりも男の傍に少しでも長くいたいという願いの方が強かったのだ。
―では、私もその中の一人だと―?
あまりの衝撃に、涙すら湧いてこない。男が自ら名や身分を明かさぬことへの不審がないと言えば嘘にはなったが、男の正体を知ろうとするよりも男の傍に少しでも長くいたいという願いの方が強かったのだ。

