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蜜愛~男になった女~
第11章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 弐―加恵    
「桜がきれいだこと」
 唐突にお千世が呟き、加恵は眼を見開いた。盛りをとうに過ぎてしまった桜は幾何かの美しさの余韻は残しているものの、見とれるほどではない。それでも、お千世はまるで何ものかに憑かれでもしたように毎日、日がな桜ばかり眺めているのだ。
「加恵殿、殿にもこの美しき桜をお見せしたいものですね」
 側室になった今でも、お千世はかつての先輩に「殿」をつけて呼ぶ。
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