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蜜愛~男になった女~
第2章 第一部【白桜記】 其の一・高嶺桜
縁からは庭が見渡せる。片隅には八重桜があった。とても珍しい遅咲きの品種だとかで、卯月もそろそろ下旬だというのに、白っぽい花をいっぱいに盛りと咲かせている。見たところ、半月前、信頼と野駆けに出た山奥で見た桜とよく似ていた。
花は八重桜に似て、華やかで重厚な落ち着きがある。色は限りなく白に近く、うっすらと色づいていた。身の回りの世話をする腰元の話によれば、この桜は〝高嶺桜(たかねざくら)〟と昔から呼ばれているという。