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カクテル好きの男たち
第6章 似た者同士の男
「いらっしゃいませ、こんばんは」
バーの扉が開いて二人の男がバーにやって来た。
仲が悪いのか
二人はカウンターに離れて着席した。
「あの…ご友人では?」
離れて座っていては会話もしにくいだろうと
珠代は並んで座ることを薦めた。
「友人?どこが!」
一人の男がそういうと
「確かに会社の同僚だけど、友人じゃないです」
売り言葉に買い言葉というように
もう一人の男も憮然としてそう言った。
「あらあら…同じ会社なら
積もる話もあるんじゃないですか?」
なにやら険悪なムードが漂っているので
取っ組み合いの喧嘩だけは勘弁してほしいと
顔にこそ出さなかったが
それ以上、二人に話しかけることは止めた。
「だいたいなぁ、
俺がいつもお前の尻拭いをしてやっているんだぞ」
話したくもないと言いながら
元来がお喋りが好きなのだろう
眼鏡のやせ形の男が口を開いた。
対して、大柄な小太りの男は
口を屁の字にして口を開かない。
「バーメイドさん、話を聞いておくれよ」
女性のバーテンダーを
「バーメイド」と呼ぶからには
眼鏡のやせ形の男はバーに通いなれているのだろう
「こいつ、下條はね、仕事でミスばかりなんだ
上司にバレたら叱られるから
俺がこっそり手直ししているんだよ」
「誰もそんな事を頼んでいないだろ!
上条こそ、いつも陰でコソコソして
気持ち悪いんだよ!」
『下條に上条ねえ…
凸凹コンビと言う奴かしら…」
笑いを噛み殺しながら
「ところで…何を召し上がりますか?」と
いつまでも注文してくれない二人に
珠代は痺れを切らして催促した。