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そんな男性方
第2章 不思議なもんですね
「不思議なもんですねえ」
「……」
「確かに他人だったあいつの体に、私の欠片が入り、宿り、成長していたわけです」
「……そうですね」
「流れてしまったが……あれは私の一部も一緒に死んだんだ」
「……」
「名前を持った、確かな命だったんだ。あと、数センチ……たったそれだけ、世界を……息さえさせられれば……」
「……」
「不思議な……もんですねえ……命とは」
「一寸の虫にも宿り、なにも残さず消えていきます」
「……その通りです」
「……奥様は」
「口を無くした。一言も物言わずにいます」
「……」
「男というのは、こういうとき、無力ですね」
「別の生き物ですから」
「ええ。それは十月十日感じていました……」
「愛する人の子を産むというのは、その愛する人を産みなおすようなものなのでしょうか」
「わかりません……が、ならば今の私はなんなんだろう」
「……」
「不思議なもんです……ねえ……」