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第4章 痴人の罠

男に会ったのは、まだ寒い４月の河原でのことだった。俺は早朝、Tシャツジーパンにサンダルで河原に来ていた。寒さなんかどうでもよかった。怒りと悔しさと、哀しみで全身が熱かった。

俺の父は会社の役員だった。しかし父は政治に負けて、覚えの無い失態をなすり付けられ父は席を終われた。父は前日俺の部屋に来て、元気か？と聞いた。
俺は、元気だ、父さんは少し疲れてるんじゃないか？と聞いた。父さんは笑って、明日は母さんとドライブに行ってくる。と言って笑った。

「あれは死人の顔だったんだ、俺は、何を見ていたんだ。」

父さんは母さんを連れていった。俺に兄弟は居なかった。俺はささやかな遺産を相続し、大学もやめることになった。