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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~
第4章 心のゆくえ
伯父夫婦は明香が持っていた玩具すら、明香に渡さず、五人の子どもたちに与えたのだ。その人形が唯一、彼女のものになったのは、もう使えないほどにボロボロになっていたからだ。伯母が〝こんなガラクタ〟と棄てようとしていたのを、明香が頼んで引き取ったのだ。
この十年の宮廷生活でも私物はあまり増えなかった。生来、慎ましやかな生活が性に合っているのだろう。他の若い女官たちのように派手やかに着飾りたいとも思わなかった。