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濡華 ~妹、涼華の過去~
第1章 発端
「ねぇ…聞いたよ…涼華、怪我したんだって……」
夕方のホームルームが終わると佐々木杏奈が声をかけてきた。
幼馴染みで小学校までは親友と思っていた人物だ。
「うん…そう……」
中学に入ると私はバドミントンに夢中になっていった。
どうも素質があったらしく、中学最後の夏は全国大会にまで進むことができた。
杏奈に声をかけられたのは何年ぶりだろうと考えながら素っ気なく答える。
「で?、どうすんの…。怪我治ったら続けんの…バド……」
高校一年の時から期待の新人だった。
この高校に入ったのも顧問の先生から声をかけてもらったからだった。
「うーん、無理っぽい…靭帯やっちゃったんだって……」
私はどこか他人事のように答えた。
杏奈は薄く笑った。
「じゃあさ…久しぶりに遊ぼうよ……」
【なんで?…幼馴染みだからってもう何年も口もきいてないのに……】
実際これからどうしようと考えていた。
「そだね…する事ないし、それもいいかもね……」
杏奈はまた微笑んだ。
それは旧友とまた仲良くできるのとは違う気がしていた。