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濡華 ~妹、涼華の過去~
第1章 発端
「ただいま……」

私の家は父、母、姉と私の4人家族。
部活を辞めてから1ヶ月が過ぎていた。
もう1ヶ月もしたら夏休みだった。

「ぁぁ、お帰りなさい……ちょっと、涼華…その髪どうしたのっ……」

「そんなに驚くことないでしょ……ただの気分転換……」

母親の視線は金髪にした頭から動かない。
そして、大きな溜め息をついた。

怪我をした当初はすごく優しくしてくれた。
それこそ腫れ物に触るようだったが、この家族で私が中心になれたのは二週間ほどだった。
それを過ぎるといとも簡単に元に戻った。
この家の中心は私が生まれる前からずっと姉の花怜だった。

溜め息の音を聞き終わると、披露は終わったと2階の自室に向かった。

制服のスカートもどんどん短くしていった。
両親はバドミントンができなくなったのなら勉強を頑張りなさいと…すごく当たり前の事を言ってきた。

【できれば、元々バドミントンなんてしてないよ…】

物心ついた頃から、姉は私の憧れだった。
幼い頃は皆、平等に可愛がってくれるものだ。
5つ上の姉はなんて言うんだろう。
ずっと皆に愛され続けてる。
小学校の時も中学も高校も…大学の卒業を控える今も…。

妹の私から見ても姉は美人だった。
スレンダーだがスタイルもいい。
勉強だってできた。
とはいえ、ガリ勉タイプでもない。
隔てなく誰にも優しく、性格も暗くない。
姉の欠点なんてないんじゃないかと思っていた。

それにひきかえ私は特に取り柄もない。
言われないまでも、周りの視線や雰囲気はいつも私を姉と比べていた。
母親に至ってはすごく解りやすかった。
「お姉ちゃんは…お姉ちゃんは…」が口癖だったから。

運動神経は私の方がいいとわかって始めたバドミントンだったからそれは夢中にもなった。
目の前の相手に技術で力で駆け引きで勝てばいいだけだったから…。
取り巻く環境と勝負をする必要なんてなかった。

「なんで怪我なんて…」

そう溢すと制服を脱いだ。
スポーティーだった下着は色物が増え、デザインも様々の物を揃えるようになった。
中学まではそんなに目立たなかった胸も高校に入ると一気に成長していった。
二年になって勝てなくなってきたのはこれのせいもあると思った。
胸だけは姉よりも大きくなっていた。
ノースリーブのカットソーにフレアミニ、パーカーを着込むと化粧をして家を飛び出した。
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