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濡華 ~妹、涼華の過去~
第1章 発端

1学期の期末テスト最終日。
明日からはまたテスト期間の休止が終わり部活が始まる。
この日をおいて他にはなかった。

回答用紙を持って廊下を歩く芹沢先生に声をかけた。

「芹沢先生、少しいいですか?…」

足を止めた先生は溜め息をついた。

「どうしたんだ、新田…」

「あのちょっと相談があって…今後のことで……」

芹沢は目の色を変えた。
怪我でやむを得ず部活を辞めたことは仕方がないと思っていたし、心配もしていた。
だが、その後の涼華の変貌ぶりには正直失望していた。
それが相談と口にしてきたのだ。
中学の時からその素質に惚れ込み、この学校に誘ったのも自分だと思うと聞かないわけがなかった。

「そ、そうか…わかった。期末テストのことで職員会議があるからな…待てるか?…」

「はい、じゃあ部室で待ってていいですか……」

「あぁ、わかった…終わったらすぐに行くから…」

そう言ってポケットから鍵を取り出し渡してくれた。

久しぶりの部室は汗臭かった。

【これが当たり前だったなんてね…】

灯りもつけずにパイプ椅子に座る。
部活のない学校はすぐ静かになっていった。

2時間くらい待っただろうか。
日も落ちかけ、部室は薄暗くなっていた。
ガラッと戸の開く音がすると遠慮がちな声が聞こえてきた。

「すまん…待たせたな……」

「いえ、大丈夫です…お時間取ってもらってありがとうございます……」

「いや、そんなことはいいんだ…俺も心配してたからな…。でも、ちょっと遅くなってしまったな…日を改めるか?…」

「でも、明日からまた部活が始まりますよね……」

「だな…わかった…。それで、相談というのは…」

先生が向かいの椅子に腰を下ろす。
私は立ち上がると歩み寄り、先生の隣の椅子に移動した。
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