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濡華 ~妹、涼華の過去~
第1章 発端
薄暗いとはいえ、まだ互いの顔は見えている。
深刻な面持ちで私は話し出した。

「先生…呆れてるでしょ…髪も染めて化粧までしてる私のこと……」

「まぁ…いくらショックだったとはいえ、ちょっと驚いたよ…」

「だって、私…どうしたらいいかわからなくて……」

「だからって、佐々木達とつるむことないだろ…」

「杏奈は幼馴染みなんです……バドを辞めた私に優しくしてくれたのは杏奈だけだったから……ぅっ…ぅぅ……んぐっ……先生っ…私っ…私っ……バドっ、やめたくなかったっ……ぁぁっ……」

先生に抱きついて嘘泣きするつもりがほんとに涙が止まらなくなっていた。

「お、おい…新田……」

先生はすがりつく私に触れてはまずいと、中途半端に両手を上げている。
お構い無しに私はすがりつき、胸の膨らみを押しつけ、本気で泣き続けた。

「俺もすまないと思ってる…もっとケアの事を考えていたら…新田に無理させていたと気付いていたら…ごめんな…」

「ぅ……ぅぅっ…っぐ……先生っ……先生っ……私っ……私っ……先生が誘ってくれたからっ……この学校にきたのぉっ……バドやめたらっ……先生と一緒にいれないのっ……ぅっ……どうしたらいいのぉっ……」

考えた台詞のはずだった。
確かに先生の期待に応えたかった。
もう、どうでもいいと思っていたのに…なんか涙も言葉も止まらなくなっていた。

先生のYシャツは私の涙でぐっしょりと濡れていた。

「わかった…わかったから…俺がこれからも相談にのるから…な、心配するな…」

上げていた両手が私の肩を掴んだ。
私はそっと顔を上げて見つめる。
先生と視線が絡み合う。
吸い寄せられるように私は先生と唇を重ねていた。

「こういうのはちょっとまずいな…」

先生は困ったように囁いた。

「でも心配するなって言ってくれたよ……。先生が髪の色も戻せって言うなら戻すよ……杏奈達とも付き合うなって言うならやめるよ……でも、そのかわり……先生が私の寂しさ埋めてよ……」

私は先生の手を取ると、胸の膨らみにあてがっていった。
先生は困った顔をしながらもその手を退かせようとはしない。

「先生…私…ほんとにどうしていいかわからないの……」

また頬を涙が伝っていく。
私達は再び唇を重ねていった。
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