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マスター・ナオキの怪店日記
第5章 裏路地で会った男

 師走前の、年内最後の定休日には業務スーパーで大量の買い物をする。そのほとんどは店で使うものだが、自宅の食材も買ってまとめて店に配達してもらう。
 手にはほとんど荷物が無いおかげで、商店街から飲兵衛横丁へと散歩がてらそぞろ歩く。赤ちょうちんやら焼鳥を焼く煙やらが、通り抜ける尚樹に手を振っているようだった。
 その一角の、薄暗い路地、ジャズのライブハウスがあるだけの通りにさしかかると、オレンジ色の明かりを放つ裸電球の外灯の下に、一人の男がたたずんでいるのが見えた。
 何をするでもなくただ突っ立っている男。でも特に不振に思わなかった。なぜなら、古いビルの二階にあるライブハウスから漏れ出る生演奏を、店に入ることなく聞くことができるから、こうした風景を目にした事は何度もあるからだ。



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