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マスター・ナオキの怪店日記
第6章 路地裏で会った男、来店
「ごちそうさま。また来るよ」
壁時計に見入ってしまっていた尚樹が慌てて男のほうを見る。しかしすでに男の姿はどこにもない。ドアが開く音も聞こえなかった。
「おい・・なんなんだよ、これ」
どう考えても開いたとは思えない、音をたてなかったドアを見つめ、それから視線が自然とカウンターの上へと動いていく。ぽつんと置かれたグラス・・
「あっ!金もらってないじゃないか!」
タダ飲みされた、と急に頭が正気に戻ったのだが、よくよく見るとグラスはまったくの未使用、つまり使われていないきれいな状態なのだ。
たしかにウィスキーを注いだ。氷も水も入れた。男も残さず飲み干した。その姿を確かに見た。ここにある、白州の水割りを・・
「あ、あれっ?酒が・・」
カウンターの内側に置いたまましておいた白州の瓶がない。確かにここに置いたままにしてあった。あとで棚に戻せばいい、もう一杯飲むかもしれないし、と。
くるりと背後の酒瓶の並ぶ棚を振り返る。そこに瓶が・・置いてある。他の酒瓶たちと一緒に行儀よく整列している。
何から何までが不思議で恐ろしくなって、さっさと店を閉めて帰ろうと、カウンターの角にわき腹をぶつけながら飛び出してドアに鍵をかけた。
裏口から出ると、冷たい風が尚樹の頬を叩く。ダウンコートのフードをすっぽりとかぶり、逃げる様な足どりで家路に着いた。
壁時計に見入ってしまっていた尚樹が慌てて男のほうを見る。しかしすでに男の姿はどこにもない。ドアが開く音も聞こえなかった。
「おい・・なんなんだよ、これ」
どう考えても開いたとは思えない、音をたてなかったドアを見つめ、それから視線が自然とカウンターの上へと動いていく。ぽつんと置かれたグラス・・
「あっ!金もらってないじゃないか!」
タダ飲みされた、と急に頭が正気に戻ったのだが、よくよく見るとグラスはまったくの未使用、つまり使われていないきれいな状態なのだ。
たしかにウィスキーを注いだ。氷も水も入れた。男も残さず飲み干した。その姿を確かに見た。ここにある、白州の水割りを・・
「あ、あれっ?酒が・・」
カウンターの内側に置いたまましておいた白州の瓶がない。確かにここに置いたままにしてあった。あとで棚に戻せばいい、もう一杯飲むかもしれないし、と。
くるりと背後の酒瓶の並ぶ棚を振り返る。そこに瓶が・・置いてある。他の酒瓶たちと一緒に行儀よく整列している。
何から何までが不思議で恐ろしくなって、さっさと店を閉めて帰ろうと、カウンターの角にわき腹をぶつけながら飛び出してドアに鍵をかけた。
裏口から出ると、冷たい風が尚樹の頬を叩く。ダウンコートのフードをすっぽりとかぶり、逃げる様な足どりで家路に着いた。