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マスター・ナオキの怪店日記
第7章 長澤夫妻の告白
まず私たちの事を話します。
私も照美も、霊が見えるんです。ごくたまに周りにいたりしませんか?見えるっていう人が。その類の人間です。
私と照美の出会いは最初の頃に話したと思いますが、そう、旅先で出会って、偶然同じ大学だったっていう。それが意気投合のきっかけではありますが、お互い見える人だったというのも打ち解けていったきっかけです。わかるんですよ、こういう人種って。この人も自分と同じだなって。
二回目のデートの時に聞いてみました。もしやあなたも?って。そしたら実はって。私もそうだというと彼女は、そうだと思った、と笑いました。
見えることが苦しい時もありますが、見えてしまうのだから仕方ない。でも互いの気持ちを理解しあえるから、割と楽です。
そんな私たち夫婦は、頼られてしまう事があります。もちろん、霊に。何もしてあげられないのですが、せめて話くらいは聞いてあげられる・・だいたいは未練を残して亡くなった人たちです。そう、未練、程度。恨みとか無念とか、この世への強い執着までは残していないといったらわかりやすいでしょうか。
ああ、もう一回酒を飲みたかったなぁ、あの店に行きたかったなぁ、とか。そして誰かにちょっとした愚痴をこぼしたい。気持ちを喋れば気が済む。その程度、といったら失礼かもしれないですが。