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犯罪特許
第1章 犯罪特許
これは今から少し遡る事、90年代後半の出来事だと推定される。
二十代後半の痩せ痩けた男の名は、、とりあえず無職さんと名付けようか。当然ながら頭も財布もカラッポと来たもんだ。唯一分かっているのは明日までに五万円という途方のない金額を捻出しなければ、リアルホームレスへの華麗なる転落という、誰もが喜びそうなドキュメンタリーが手ぐすね引いて待っている。
それでもギャラが出るなら!などという笑えない冗談はさて置いて男はサラ金で借りるほどの身分もなければヤミ金で借りるほどの馬鹿でもなかったというのだから、その中途半端さは意外と深刻だったりする。辿った人生もまたしかりか。要はどっち付かずは命取りだという事実。もちろん自覚などこの男にある訳などない。
やはり最後に頼れるのは家族。特に母親である。自称(可愛い一人息子)の男は部屋に引かれた電話の受話器を取りプッシュホンを乱暴に叩いた。
しかし、なんというか、、電話だけは繋がっているのだから、この男の優先順位などは我々凡才には到底理解は出来ないし、加えて言うならしたくはない。
「もしもし、、」
運良く母親が電話に出る。これは幸先がいい。