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犯罪特許
第1章 犯罪特許
「俺だよ、俺!かあちゃん、悪いけど、、金、、金貸してくれないかなぁ、、」
「はぁ?金!またお金かい!あんた一体東京で何やってんのよ!たまに電話をくれたかと思うと本当!ロクな事ないね!」
「うん、、ごめん。実は友達の車をぶつけてさ」
咄嗟に出る嘘は二回目というか二台目。
「で、いくらだい?」
「三十. . いや、二十で大丈夫。後は自分でなんとかするから大丈夫、、」
「全く!三十万必要なんだろ!で、あんた!ちゃんと働いてるんかい?」
これもまた計算済み。
「まぁ. .それなりに働いているよ」
「フン!こういう時の為にしっかり貯金しとかなきゃ駄目だろ!.全く! じゃあ明日振り込むからね!」
「出来れば午後イチで頼むよ。母ちゃんお願い. .
」
「そんなの無理だよ!」
電話はガチャリと切られたが男はニヤリと笑った。よし!午後からもうひと勝負だ。何だかんだと午後イチには振り込まれる。この辺りは親子だけにまさに阿吽の呼吸。というより毎度のパターン。
( それにしても、、)
男は不意に思う。
母親は何もかも騙された振りをしてお金を出しているのか?
それとも、、本当にボケているのか?
(、、お、お母ちゃん)
ふと男の脳裏に過るのはあの小さな小さなおぼろげな町の商店街。夕食の買い物帰り。まだ幼いボクの小さな右手を包み込む夕焼け色に染まる大きく荒れつつも力強い手のひら。
どこからか美空ひばりの歌が聞こえる。
おかあちゃん、、おてて、だいじょうぶ?イタくはないの?
ん?大丈夫だよ。あんたは優しい子だねぇ
、、、、
しかし一分、いやいや!正確にはものの僅か数秒後
( まっ!どっちでもいいや!)
男は部屋中の小銭をかき集めて安いラーメン屋で腹と期待を膨らませた後に銀行ATMへと急いだ。
ゲップ!
うん!欲望にお腹いっぱいなどなかなかないのだ。
そして、、振り込まれて、、は、、
いない。
「、、、、」
さてさて、それから十分おきにATMへ行くのだが振り込みはない。
いつの間にか午後二時を過ぎ無情にもタイムアウト!諦めた男は部屋に戻り寝た、というよりもう寝るしかない。
時折電話がやかましく鳴るが出なかった。家賃催促の不動産か、振り込みに遅れた母親に違いないからだ。請求も説教もごめんだ。