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海鳴り
第5章 うねり
門の前で目を丸くして驚いている校長に喜び、嬉々として手を振りながら、雲に乗りきれない程たくさんの子供達が校庭へと進む。


「やったー」
「あははは、楽しかったね」
「最後まで言えたー」


律子を残してばらばらと隊は崩れ、子供達はそれぞれの教室を目指して駆け出したり、追いかけっこを始めた。


「いったいどんな魔法を使ったんですか?」


校長が律子に微笑みむ。

「私は何も…、子供達に巻き込まれたんです」

「そうですか?
いやぁ、羨ましい…、まったく素晴らしい授業でしたよ。
山下先生…、教師ってやめられませんね、…そう思いませんか」

「…はい、思います。
本当に…」


この町の、この出来事を、律子は一生忘れないだろうと思った。

手には武のカードが残されていた。

落書きのような赤が律子には愛しかった。

教師への道筋、やりがいのようなものを得られた喜びの一方で、胸の奥で燻(くすぶ)り出した相沢への気持ちを、早く握り潰してしまいたい。

振り向けば、さっきまで晴れ渡っていた空に雲が掛かっていた。

海から吹いて来るひんやりと冷たい風が、雲間に太陽を探そうとする律子を不安にさせた。



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