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抜いてください
第1章 抜いてください
「しんじられません」
「わたしも、まさかファンとこんなことになるなんてね」と言って、おんなははじめて笑った。おれもつられて、笑った。
「抜ける?」と、おんなが言った。
「もちろん」と即答し、おれは言う。「デビューしてからいままで何百回と抜いてきましたから抜けます。おれのペニスだって憶えてしますよ。抜いた数だけ憶えています」
「じゃあもう抜けるよね」
「抜けます」
 と宣言してからものの数分で抜けたおれは、おんなのあそこにたっぷりの精子を放って、ちょっとやわらかくなったペニスをおんなはしゃぶってくれるサービスまでしてくれて、おんなはなにごともなかったように、おれに手をふって繁華街の雑踏のなかにきえていった。
 ビルの裏路地から出たおれは、ちょっとやわらかくなったペニスに目をやってから、晴れ渡ったあおぞらを眺め、繁華街の通りに目をやった。
 深呼吸をした。とてもすっきりした。生きている生の喜びをかんじた。こんな偶然があるんだなとおれはおもった。と、こんな三文エロ小説を最後までよんでくれた誠実なあなたとのめぐり合わせに感謝したい。ありがとう。
 おれのペニスは堅くなる。あんなにたっぷり精子を放ったのに、ギンギンにひと回りおおきくなる。まさか。そんな。そんな短い感想がついおれの口から出た。繁華街の通りのむこうから歩いてくるのは、つまりそれはおれの好みの、セクシーじゃなくて正統派の女優であって、コマーシャルは終わったがキツネを耳をつけてうどんをすするコマーシャルはよかった。そんな感想がよくきこえる女優さんで、おれのドストライクなおんなだった。そのおんながおれにむかって歩いて来てるのだ。
 準備はいいか? とはさすがに言うと寒いから言わないが、おれのジーンズのなかで拡張を続けるペニスに語りかけたが、準備万端だと言わんばかりにペニスは熱をおび、それはその女優のあそこにむけられていた。
 第二章。
 第二ステージ。
 第二幕。
 が、はじめる音がきこえた気がしたが、気のせいだろう。そんな音は現実にない。あくまでもおれの頭のなかで勝手に響いているだけだが、まえから歩いてくるおんなはほんものだった。
 おれはよしと言った。ペニスもよしと言った。ギンギラギンギラギンギンにさりげないペニスを保ったまま、すこし早歩きでおれは、歩きスマホでうつむきぎみのそのおんなのもとに歩きはじめた。
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