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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第3章  春の夢 其の参
 老中の松平越中守さまのお屋敷の前を通り過ぎると、直に和泉橋が見えてくる。立派なお屋敷が建ち並ぶ中でもひときわ宏壮で人眼を引く松平さまのお屋敷の塀越しに、柿の樹の枝が外にのびている。
 夕陽を浴びた柿の実がその橙色をいっそう際立たせている。秋も大分深まってきた。そんなことをとりとめもなく考えつつ、清七は再び、先刻よりはやや歩幅を大きくして帰り道を急ぐ。その時。
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