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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第3章  春の夢 其の参
 清七が主永正の屋敷を出たのは夕刻、日毎に短くなってゆく秋の陽がそろそろ傾こうかという時分である。西の空を茜色に染める日輪が今日最後の輝きを見せ、蜜色の夕陽が武家屋敷町の築地塀が延々と続く小道をゆるやかに照らし出していた。
 人気のない道をゆっくりとした脚どりで辿りながら、清七は何の気なしに頭上を見上げ、軽い吐息をつく。
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