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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第4章 春の夢 其の四
 赤児をそっと畳に寝かせると、清七は三和土に降り、水瓶から柄杓で水を掬い、夢中で呑んだ。ひと心地つくと、再び畳に上がり、そろそろと赤児に近づく。
 生後三ヵ月を迎えたばかりの赤児は紅い着物にくるまれて、無心な寝顔を見せていた。色白の整った眼鼻立ちはお須万に似ているようでもあり、自分に似ているようでもある。紅地に千羽鶴を織り出した着物は上物で、流石は江戸でも指折りの大店、しかも呉服問屋の娘だけはある。
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