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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第4章 春の夢 其の四
仰天した乳母が茫然自失の体になっている隙に、腕の中のお千寿を強引に奪い、また、来たときと同様に一目散に走って逃げた。お千寿を奪われた乳母は〝かどわかし、人攫い!〟と懸命に叫んでいたが、いかにせん、周囲には人気は全くなく、すぐに助けにくる者はいなかった。
清七はそのまま、お千寿を長屋に連れ帰った。それが、つい一刻余りほど前のことになる。途中、斜向かいの大工の女房とすれ違った以外、人に逢うことはなかったのは幸いであったといえよう。
清七はそのまま、お千寿を長屋に連れ帰った。それが、つい一刻余りほど前のことになる。途中、斜向かいの大工の女房とすれ違った以外、人に逢うことはなかったのは幸いであったといえよう。