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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第4章 春の夢 其の四
 その女房は明らかに不審げな眼でじろじろと赤児を抱いた清七を見ていた。それも道理で、女房もおらぬ寡夫(やもめ)暮らしの男が突如として赤児を抱いて歩いているのを見かければ、面妖に思われても致し方ない。
 清七は、なおもお千寿の寝顔を見つめていた。そろそろ、行かなければならない。清七は名残を惜しむかのように更に赤児を見つめ、ゆるりと立ち上がった。お千寿を攫ってからすぐ、清七は同じ長屋に住む桶職人の九つになる伜に小遣いを握らせ、伊勢屋まで遣いを頼んだ。
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