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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
 顔立ちといえば、末は役者にでもしたらと通りすがりの本物の役者に言われるほどで、男の子ではあっても、まるで女の子のようにきれいな顔をしている。
―あたしは、こんなだから一生しがない大部屋役者で終わるしきゃないけど、こんな可愛い子なら、今から仕込めば将来は立て役にもなれるさ。その気になったら、いつでもおいでよ。あたしが師匠に口を利いてやるよ。
 いつだったか、お民が兵太を連れて両国界隈を歩いていた時、女形だという若い男が寄ってきて、真顔でそんなことを言った。
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