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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
 お民が暮らす長屋は徳平店と呼ばれており、江戸の外れにある。要するに江戸のどこにでも見かけられる粗末な棟割り長屋だ。こんな長屋に暮らす連中は大方はその日暮らしで、我が身の身過ぎ世過ぎがやっとという人間ばかりだが、その分、長屋の住人たちは互いに助け合って暮らしていた。世話好きなのは何もお民に限ったことではなく、徳平店の女房連は皆、似たり寄ったりである。とはいえ、その中でもお民のお節介焼きは飛び抜けてはいた。
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