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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
 お民と兵助は外見だけで言えば、本当に真反対である。小男で所帯を持った時分、既に鬢(びん)の毛が少なくて貧相な髷(まげ)しか結えなかった兵助は、その頃から三十過ぎに見られていた。
 お民は女にしては滅多にないほど大柄で、最近は横幅も大きく―つまり太ったということだ―なってきた。器量もさして良いとはいえず、贔屓目に見ても十人並みといったとこだろう。
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