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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
玄庵は頷き、お民に言った。
「お民さん、とりあえず今夜が山だと思うてくれ。それと、病人の身体を冷やすのは良くないから、上にかけるものは十分かけてあげる方が良いな。薬を出すから、後で誰かに取りにきて貰うように」
先刻よりは幾分か穏やかな玄庵の声に、お民は頷いた。
「くれぐれも気を落とさぬようにしなさい。儂もつい言わでものことを言うてしもうた」
玄庵は小さく頭を下げると、薬籠を抱えて帰っていった。