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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
お民は、ただひたすら昏々と眠り続ける良人を見守った。我が身の無力さを、これほど痛感したことは、ついぞなかった。たった一人の倅を突如として失ってしまったときも、深い哀しみと底なしの絶望に突き落とされはしたものの、あのときははまだ兵助がいた。共に倅の死を悼み、嘆く良人がいた。倅を失った、理不尽にも突然取り上げられてしまったことへ苛立ち、誰にぶつけてもしようのないやるせなさ、怒りを兵助に吐き出すことで、お民は正気を失うことなく済んだ。