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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 一つめの恋花 春の夢 其の壱
 橋のたもとまできた時、清七は二人の間に落ちた沈黙に耐えかね、ふと女に問うた。
「何だって、こんな夜更けにふらふらと出歩いてるんだ?」
「あの子の泣き声がどこからか聞こえてくるような気がして」
「あの子―?」
 清七が問い返すと、女がふいに立ち止まった。つられるようにして清七も歩みを止め、女を振り返った。
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