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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
といっても、娘が家で待っているため、そのたった一つの愉しみもせいぜいがひと月に一度か二度ほどのことだったが。女に惚れられることもないのは事実だが、弥助自身も敢えて女と拘わろうとも思わなかったせいもある。
弥助はお静が亡くなって十年を経た今もなお、亡くなった女の面影を後生大切に抱えて生きているのだ。お静はたいそうな美貌であったが、美しかったのは何も容姿だけではない。心根のきれいで、優しい女だった。