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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 一つめの恋花 春の夢 其の壱
「―お前さん、ああ、お前さん、やっと帰ってきておくれなんだね?」
 「え」と、清七は絶句した。
 どうやら、この女は本当に狂っているとしか思えない。
 子どもの泣き声にせよ、今の清七に〝お前さん〟と呼びかけることにせよ、女は本来ならば見えないもの、聞こえないはずのもの―つまり幻聴や幻覚といったものを見聞きしているようだ。
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