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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
 美空は、そういう娘だ。あの齢で、はやたとえ父といえども、踏み込んではならぬ領域があることをちゃんと心得ている。外見はどこから見ても年相応の愛らしい少女だけれど、美空の心は十二歳という年齢よりはるかに大人びている。
 そういった気遣いができるのは一つには美空が生来備えている気質、優しさといったものだろうが、穿った見方をすれば、美空がそれだけの分別を身につけざるを得なかった、苦労を重ねてきたということでもある。
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