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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
 六つ、七つの頃からいっぱしに包丁を持ち、弥助と二人分の飯の支度から洗濯と何でもこなしてきたのだ。美空の両手は到底十二の少女のものとは思えぬほど荒れ、冬の今はひび割れやアカギレが無数にできている。
―俺は不甲斐ねえ父親だ。お静ばかりか、美空にまで苦労のさせどおしだ。
 厭な顔も愚痴一つ零さずくるくると働く娘の姿を見るにつけ、弥助は十年前に亡くした女房を思い出さずにはいられない。お静にあまりにもよく似た美空を見ていると、罪の意識に苛まれてしまうのだ。
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