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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
愕いたことに、おれんの店〝花のれん〟は弥助の住まいから歩いてさほど遠くはない場所にあった。町人町の目抜き通り―弥助がおれんと出逢った紅白粉問屋のある道を真っすぐに進み、丁度往来の外れに当たる四ツ辻沿いに建つ筆屋の角を曲がれば、人気のない細道に入る。その道の突き当たりに〝捨て子稲荷〟と呼ばれる小さな祠があり、その前を通り過ぎた先がもう徳平店の木戸口であった。
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