この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
「あの人は本当に子どもがそのまま大人になっちまったようなお人なんです。二十一にもなって、現実というものがまるで眼に入っていない。先日も若旦那のおっかさんがうちの店の方にお越しになって、私に土下座までして若旦那と別れてくれなんておっしゃるんですよ。ご丁寧に金包みまで持ってね。あたしにすれば、誤解も良いところです。三笠屋さんでは、あたしが世間知らずの若旦那を誑かして、良いように操ってると思い込んでいなさるようですけど、とんだ茶番ですよ。