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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
弥助が懐から銭入れを取り出し、おもむろに小粒銭を差し出すと、おれんは笑った。
「本当に律儀なお人。今日の分はお代は頂きません。この間のお礼だって何度も言ったじゃありませんか。この次からはちゃんと頂きますから」
その刹那、弥助は我が耳を疑った。今、たった今、おれんは何と言った? 確かに〝この次からは〟と言わなかったか。また、おれんに逢える―!! その事実は、弥助を自分でも想像できぬほど有頂天にした。