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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第9章 桜いかだ 其の弐
弥助はしばらくその場に佇んでいたが、やがて物言わぬ小さな石に声をかけた。
「また、来るよ」
踵を返し、ゆっくりと歩き出す。途中で一度立ち止まり振り向くと、既に線香の煙はとうに消え果てていた。
再び今度こそ前へと歩き出した身に師走の寒風が滲みた。弥助は思わず身を震わせ、粗末な着物の前をかき合わせた。
そういえば、美空が今朝、古着屋で綿入れを探してくると言っていたことをぼんやりと思い出す。
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