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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第9章 桜いかだ 其の弐 
 弥助は自分がこれほど優柔不断だとも意気地なしだとも思ったこともなかった。お静に惚れたときは、他の男に奪われぬ中にと猛然と果敢に接近していったくせに、おれんに対して、これほどまでに臆病なのは、やはり歳のせいなのだろうか。
「おれんさんじゃねえか」
 本当にそれまで、これっぽっちも思い出しもしなかった人物にたまたますれ違ったとでもいうように、何げなく口にするのが今の弥助には精一杯だった。
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