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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第9章 桜いかだ 其の弐 
 そんなことを考えながら、墓地を出て開祖の浄徳を祀る奥ノ院を通り、再び絵馬堂の傍を通り過ぎようとしたその時、朱塗りの鳥居をくぐり抜けてこちらへ歩いてくる女とはたと眼が合った。―何と、その女は、おれんだった。
 この十日間余り、幾度も〝花のれん〟に脚を向けかけては、その度に行ってはならぬと己れを戒めていた弥助である。
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